心疾患患者のデータを読み解く
 
第8回
心不全
西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

1.心不全とは・・・
 書いて字の通り、心臓の不全状態です。心臓の収縮・拡張機能が低下し、様々な臓器へ血液(酸素)を送る事ができず、他の臓器へ障害を引き起こします。
 心臓は静脈血が流れる右心機能と動脈血が流れる左心機能にわけることができます。そこでまず、右心不全と左心不全についてお話します。

2.左心不全(図1
 左心機能が低下すると、全身へ送り出す血液量(心拍出量)が低下し、各種臓器の低灌流による臓器障害が出現します。脳血流の減少では意識障害や不穏、腎臓では尿量減少、骨格筋では易疲労感、皮膚では冷感やチアノーゼなどです。その他にも肝機能障害や腸管蠕動(ぜんどう)低下などもあります。
 全身への拍出が制限されると、左房、肺動脈、肺静脈へと血液がうっ滞し、その結果肺毛細血管の内圧が上昇し、血管外へ水分が漏出し(肺うっ血)します。さらに進行すると間質を超えて肺胞内へ水分が漏出し肺水腫が生じます。肺水腫時の痰の性状は、ピンク色の泡沫状痰というふうによくテキストなどに書かれていますが、これは毛細血管が圧の上昇により破綻した結果です。肺水腫時は、その他にも低酸素血症、湿性咳嗽(がいそう)や喘鳴(ぜいめい)などが出現します。また、肺水腫が重度となると、少しでも左心室への容量を減らす=下肢からの静脈灌流量を減らそうと、座って 呼吸をしようとします(起座呼吸)。
 夜間臥床すると下肢からの静脈灌流量が増えます。初めはフランク・スターリングの法則に従って心拍出量が増加し、腎血流量の増加により尿量が増加しますが、左心機能の低下により静脈灌流量に対応できなくなると肺水腫に至ります。夜間帯に苦しくて起きてしまう、横になって寝ていられない、などの症状がある場合は左心機能低下のサインです。

 

3.右心不全(図2
 右心機能が低下すると、肺循環を通過して左心系へ灌流する血液量が低下します。結果、重度となると左心不全と同様に全身へ送り出す血液量が低下します。しかし、大きく異なるのは、左心不全ではうっ滞した血液で肺水腫が出現しますが、右心不全で血液がうっ滞するのは、右心房と右心房に戻ろうとする大静脈血管です。 よく見られるのが頚静脈の怒張です。そして、中心静脈圧が上昇すると消化管の浮腫や肝腫大による消化器症状の出現や、毛細血管から水分が露出し下肢の浮腫や胸水、腹水が出現します。

 以上の心不全の臨床症状はしっかりと覚えておきましょう。
 患者が救急外来に受診した時、入院患者の状態が変化した時に、上記の様な臨床症状が認められる場合は、心エコーによる心機能チェック、胸部レントゲンによる心肥大などの検査を行い、確定診断をしていくと思います。
 また、上記の病態生理を理解しておくと、続いてお話していく治療についても理解しやすいことでしょう。

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