心疾患患者のデータを読み解く
 
第4回
後負荷
西新井ハートセンター病院 白坂友美(感染管理認定看護師)

 心拍出量を決定する因子は、「前負荷」「後負荷」「心収縮」「心拍数」があります。今回は、後負荷について詳しくお話します。

1.後負荷とは・・・
 後負荷とは、心臓が血液を拍出する際にかかる抵抗になります。後負荷がかかると心臓は抵抗に打ち勝って血液を拍出しなくてはならず、心筋の仕事量は増大し血圧が上昇します(心筋酸素消費量の増大)。しかし、心筋の収縮力が低下している場合や血管抵抗が高すぎる場合は、この抵抗に打ち勝つ事ができず心臓からの血液の拍出量は低下してしまいます(図1)。後負荷が少ない場合は、心臓は楽に血液を拍出することができ、心筋の仕事量は減少します。
  後負荷には、血管の太さ、血管の弾力性(動脈硬化)、血液の粘稠度などがあります。


(1)血管の太さ

 心臓から打ち出す血管の太さが細いと、心臓は狭い血管に向かって血液を押し出すために強く収縮しなくてはならなくなります(図2)。例えば、10mlのシリンジに18Gの針を装着した場合と23Gの針を装着した場合では、18Gの針の方が楽にシリンジの内筒を押す事ができますよね。これと同じ原理になります。
 この現象は、血管の中膜の平滑筋が発達している末梢の動脈で見る事ができます。血管の平滑筋が収縮したり拡張したりして、全身の血流配分や血圧のコントロールを図っています。


(2)血管の弾力性
 血管には弾力性があり、通常心臓から血液を押し出した時に血管は軽く膨らみます。動脈硬化などで血管の弾力性が消失すると、心臓から血液を拍出する際の抵抗となります。
(3)血液の粘稠度
 血液の粘性は主に赤血球で決まります。貧血の場合(ヘマトクリット低下)は血液の粘性が減少し、血管抵抗が減少します。逆に赤血球増多症などのようにヘマトクリットが高い場合は、血管抵抗が増大し血圧が上昇します。
 粘性が少なくサラサラしている液体はスムーズに流れますが、粘性が高くドロドロした液体は流れがゆっくりとなりますよね。この流れやすさが「血管抵抗」となるわけです。

2.後負荷の指標
 臨床現場では後負荷をどのようにして把握しているのでしょう?
心臓には右心室と左心室があります。右心室は肺を通り左心系へ血液を送り出すため、肺の血管が抵抗となり、左心室は全身へ血液を送り出すため、全身の動脈血管が抵抗となります(図3)。
 スワンガンツカテーテルが留置されている場合は、機械が計算して肺血管抵抗(右室の後負荷)および体血管抵抗(左室の後負荷)が示されますが、臨床ではなかなか数値が表示されていない場合が多いと思います。大まかな指標として、肺動脈圧が右心室の後負荷の指標となります。体血管抵抗(SVR)は以下の公式で簡単に求めることができます。
     SVR=(平均動脈圧−右房圧)/心拍出量×80 (正常値:800〜1200 dynes・sec/cm5)
 また臨床現場では、体血管抵抗は私たちの手でも確認する事ができます。患者の手や足などの末梢に触れ、「冷たいな〜」と感じる場合は末梢の血管が収縮傾向で血管抵抗が高いと判断できますし、「ポカポカしていて暖かいな〜」と感じる場合は、末梢の血管が拡張し血管抵抗が低い傾向にあると判断できます。循環器の看護師ならば、自分の手と目で患者の循環状態を感じる事も重要です。

3.後負荷のコントロール
 後負荷には、血管の太さ、血管の弾力性、血液の粘性などが関与しているとお話しました。血管の弾力性(動脈硬化)は器質的な変化のため、コントロールは困難となります。また、血液の粘性も、貧血ならば組織の酸素供給低下につながりますから輸血などの治療は行いますが、血液粘性のコントロールで心臓の後負荷をコントロールすることはないでしょう。 後負荷のコントロールは主に血管の拡張・収縮でコントールを図ります。

(1)後負荷が高い場合
 血管が収縮していると後負荷が高くなります。そのため、血管拡張薬を使用し血管抵抗を低下させます。硝酸薬は前回の前負荷にもあるように、主に静脈系の血管を拡張させますから後負荷コントロールには活躍しません。主にANP(心房ナトリウム利尿ペプチド)、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬、AT(アンギオテンシン)U受容体拮抗薬、Ca(カルシウム)拮抗薬などで後負荷のコントロールを図ります。血管拡張薬には様々な種類がありますが、その薬剤がどこにどのように作用し血管を拡張させるのかはきちんと把握しておきましょう(表1)。また、カテコールアミンを使用し血管収縮をさせている場合は、心機能を見ながら減量する事も必要かもしれません。
 手術直後で忘れてはならない事は、疼痛や低体温による血管収縮です。疼痛や低体温時はエピネフリン、ノルエピネフリンが分泌され血管が収縮します。疼痛コントロールや体温管理は重要な看護ケアです。


(2)後負荷が低い場合
 血管が拡張していると後負荷が低くなります。そのため、α作用の強いノルエピネフリンを使用し血管を収縮させます(次回のWEB連載第5回「心収縮」を参照)。また、血管拡張薬を使用している場合は、減量または中止する事も必要かもしれません。
 血管拡張はよく発熱患者に起きます。看護師として行わなくてはならない事は体温調節です。クーリングや掛け物調節などを実施し、体温を下げるなどの看護ケアは忘れてはいけません。

 

この連載の内容の無断転載を禁じます。

最新セミナー情報
TOP